中房温泉から北鎌尾根

縦走・ピークハント
合戦小屋を過ぎると見える槍の穂先。 気分高まる。

9月24日(日)~26日(火)  yoyu(単独、記録)

「孤高の人」加藤文太郎さんや「風雪のビバーク」松濤明さんの墓標であり、日本で最も有名なクラシックアルパインルートの一つと言っても良いだろう北鎌尾根。 そういう伝説というか一種の浪漫のあった昔と異なり、GPSアプリやインターネットにいくらでも探せる登山記録、精度の高まった天気予報、進化した装備などで、今やバリエーションの入門ルートとなっているのかもしれません。 しかし現在でも遭難事例は毎年発生しており、一般登山の単純な延長で行けるルートではないのは確か。 ルーファイを含めてクライミングや沢登りの経験を試せる良い課題として「初めて行く時はソロ」と思ってましたが、今月上旬に北岳に登って体力的にも準備出来たと思い、決行することにしました。

トラック全体。 計画では東鎌尾根~表銀座で中房温泉に戻る予定でしたが、体力的な判断で上高地に下山。

【一日目】中房温泉登山者駐車場3:31~合戦小屋6:13~燕山荘7:15~槍ヶ岳・大天井岳・常念岳分岐9:37~大天井ヒュッテ10:24~貧乏沢下降点11:11~貧乏沢出合13:33~北鎌沢出合14:09~北鎌のコル17:27

スタートの中房温泉の無料駐車場(標高1,409m)から燕山荘(2,712m)までだけで単純標高差が1,300m以上、更に一日目の最後は大天井ヒュッテの先の登山道の無いガレた貧乏沢を標高差800m弱下ってから北鎌沢を約700m登り返す一日目が体力的な核心と思ってました。 ヘッドランプを点けてスタート。 長い一日になる予定なのでゆっくり歩きを心掛けました。

合戦小屋を過ぎると眺望が開けて、第一目標の燕山荘が見えました。 わずかですが紅葉も始まってます。

この日は快晴で燕山荘はたくさんの登山者でにぎわってました。 ピークハントはしませんが、明るいスッキリとした山頂部が印象的でした。(表銀座も初めてです)

燕岳。写真に写っていない右方向の山荘は多くの登山者で賑わう。 天気のせいもあるが明るい雰囲気。

表銀座縦走の開始。 北鎌尾根も遠くに見える。

途中多少のアップダウン(200mくらい?)はあるけど「銀座」と呼ばれるだけあって歩きやすく整備された登山道と思いました。 大天井岳もピークハントはせず、天井沢側をトラバースして大天井ヒュッテを目指します。 このあたりから携帯が圏外になり、バッテリー節約のために機内モードに変更しましたが、そのせいで「いまココ」のトラックがこのポイントまでで途切れ、会長とatsukoさんはご心配をおかけしました。 すみませんでした。

大天井岳の西側(天上沢側)をトラバース。 ゴツい箇所もあるが登山道としてキチンと整備されてました。

10時台に大天井ヒュッテに到着したらランチ営業がオープンしてた(9:30~)ので、モツ煮うどんを注文。 食料はアルファ米とフリーズドライをメインに「絶対余る」くらい持参してましたが、それでも山中で気楽に普通の食事ができるのはありがたい。

モツ煮うどん、おいしゅうございました

大天井ヒュッテからは喜作新道を進んで、コルのどこかで右側に入る踏み跡があるハズですが、気にしながら歩いていると気づかずに通り過ぎそうなくらい細い踏み跡を突然発見。 「登山道じゃないから当たり前かぁ」とは思うが、いよいよこの貧乏沢下降点(2,549m)からバリエーションルートの始まり。 ヘルメットを装着して気を引き締める。 踏み跡を1~2m登って稜線を越えると下降が始まりますが、最初は這松の枝が錯綜して払い除けながら進む、「なんじゃこりゃー」状態でしたが、すぐに不明瞭ながらも進むべき方向が分かる「踏み跡っぽい」ルートに移行。

不明瞭ながらも行くべき方向は分かるって感じ

途中からガレた沢に入り、枯れ沢が湧水で通りにくくなったり段差がひどくなったりすると沢の脇を下りますが、ガレ沢を標高差800m近く延々と下るのはかなりツラくて、「今日中に北鎌のコルまで登るのは諦めようか。。」と思いながらでした。

ガレ沢に出るとそれを下る。 これはまだ上部の枝沢で貧乏沢の本流はもっと広くガレてます。

おまけに苔でフリクションゼロの岩があり、登山靴では一瞬でコケそうになります。

一か所だけ、残置ロープがありました。 苔で滑る岩だったのでありがたい。

なんとか貧乏沢を下り切り、天井沢の貧乏沢出合(1,774m)に到着。 事前に調べた記録によれば、北鎌沢の途中の水場は枯れているかもとのことで、天井沢の貧乏沢出合の少し上流の湧水箇所で給水。(この日北鎌沢を登ると実際には給水可能な湧水はありました) ハイドレーション2Lとウォーターバッグ2Lを満タンにしてから河原を歩いて北鎌沢出合へ。 テント張れる良さそうな場所が見当たらず、脚も少し回復した気がするので北鎌のコルまで登ってしまうことにする。

北鎌沢もガレ沢ですが、貧乏沢の様な苔で滑る岩はほぼ無くてフリクションは良好でした。 ただ、ルーファイには完全に失敗。 「左俣はダメ」は事前に調べて知ってたので最初に右俣を選択したのは良いのですが、その右俣も何本かの枝沢に分かれていて、上の景色を見てもどれが北鎌のコルなのかさっぱりわからず、登りやすい方を登っていたら左に行き過ぎたらしい。 ついに崖で行き詰まりました。 もっと早めにGPSアプリを見れば良かったけど、急なガレ沢を下るのも怖く、トラバースすることにしましたが、これが今回一番怖かった。 絶対滑ったらアウトの状況で草をつかんで泥壁を蹴り込んでキックステップを作ったりで、二日目の北鎌尾根よりはるかに緊張しました。 なんとかトラバースに成功したと思ったら今度は右(左岸)に行き過ぎたらしく、目標のコルを北鎌尾根の末端側から崖下に見下ろすところまで登り過ぎ。 樹木につかまったりでなんとかコルに無事ランディングで事なきを得ました。

下山してから他の方の記録を調べると、「右右左」とか「右3回、最後に左」とか書かれていて、「左俣はダメ」だけでは不足みたい。 事前にもう少し調べておくべきでした。

「暗くなる前に到着して良かったー。」と安堵しながらテントを設営。 すぐに暗くなり、食事の支度をしながらも長い行動時間の疲れで早く横になりたい。 食事を終えてすぐに就寝。

【二日目】北鎌のコル6:44~独標(の先のピーク)10:00~槍ヶ岳13:42~槍ヶ岳山荘15:00ころ(?)

北鎌のコルは自分の一張りのみ、静かな朝

圏外と思っていたけど念のために機内モードを解除してみるとアンテナ1本。 「トラックが途中で止まってる。」と心配していただいてた会長から電話があり、またLINEのatsukoさんからのメッセージがあり、応答できました。 ご心配をおかけしました。

前日の疲れは残ってますが天気は良く、「ゆっくり行こう」と出発。

出だしは踏み跡明瞭

少し登ると独標が見える

基本的にルートを示すものは踏み跡っぽいものだけで、登山道の様な〇×→は一切ありません。 逆コの字の様なトラバース箇所にロープが設置されていましたが、これも賛否ある様です。

ザレていない岩場は踏み跡も無いので、地形判断でルートを判断しますが、全体を通して「クライミングのグレードを付ける様な箇所に行き当たったら、それはルートミス」、つまり、ルーファイが正しくさえあれば簡単に登れるルートだと思いました。 垂直に登る岩場もありましたが、縦横斜めにクラックがあり、正しいルートを選べば垂直でもガバガバです。

下部の取り付きが分からない場合、その上を見てルートっぽい箇所を探し、そこに登るためのどこから取り付くのが安全かを探る様な作業が多かった気がします。

とはいえ、独標へのアプローチは大失敗しました。 ピークに行きたかったのですが、トラバースし過ぎてしまい、ロープ確保が無いとそれ以上進めない場所で行き詰まり、引き返して登ったのですが、結果的に独標ピークの先まで巻いてしまうことに。

北鎌沢の失敗と独標を巻いてしまった失敗が明らか

クライミングは簡単と言っても不安定な岩はとても多くて、フリーのクライミングエリアとは根本的に違うことも良くわかりました。 一見しっかりした小さくない岩もいざ力を入れると外れそうになったりしたので、慎重に確認しながら登らないとアブないです。 人に当たれば死ぬだろうサイズの岩も不安定なので、パーティの場合は後続が落石に当たらない様にタイミングも大事と思います。

独標の一つ先のピークから。 ここからは基本尾根通しが安全。

大槍が段々と近づいてくる

大槍には北鎌尾根は向かって左に接続しており、そのまま左から登りました。 たぶん左のカニの爪みたいな岩の近くに有名なチムニーがあるらしいのですが、自分はそのチムニーが分からず、下山してからそのチムニーの写真を検索しましたが、どうも違うルートを登ったみたいです。 しかし結局は頂上の祠の裏に出て、頂上におられる登山者の方々に祝福していただきました。 ありがとうございました。

写真撮影してるバックの祠の裏から現れるので即「北鎌ですかー」と声を掛けられます

初めての槍ヶ岳頂上。 眺望が最高ですねー。 富士山も見えました。

南面もかっこいい

時間が掛かったのと脚の疲れで槍ヶ岳山荘にテン泊を決定。 また、東鎌尾根経由で表銀座~中房温泉に戻る計画でしたが、疲れがたまっていたので翌日上高地に下山することにし、atsukoさんにはLINEで計画変更を連絡。 中房温泉に駐車してる車をそのまま回収したいので、午後3時過ぎにテントで就寝し、バスの始発に乗りたくて午前零時に下山開始。 上高地バスターミナルまで長かった~!!  下山してから二日後に上高地で韓国人の男性が熊に襲われたニュースを見てビビりましたわ。。

(完)

 

 

 

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